企業価値向上を目指して(その1)

1.オーナー経営者のお悩み

こんにちは。初めまして。
円熟FP事務所、ファイナンシャルプランナーの菊地和明と申します。

現経営者の方であれば、自社株式や事業資産の後継者への移転、それに伴う
ご親族への配慮、ご自身の自社株移転後の経営権維持方法、外部株主対策、
あるいは、第三者への会社売却の進め方等々ではありませんか。

又、後継者を目指していらっしゃる方は、早く自社の経営課題を把握したいが
ベテランの役員には聞きづらい、と悩んでいらっしゃいませんか?
本当に自分がリーダーシップを発揮して業績向上を図れるのだろうか? 
このままビジネスマンとして会社勤めしていた方が安泰な人生を送れるのでは
ないだろうか、等々です。

そういったお悩みにも相談を承りますが、今回は、意外にも自社の
企業価値をご存じない経営者様等に、その重要性と算定方法をご紹介したいと
思います

2.企業価値算定方法

先ず、企業価値評価とは正に「企業の価値計算」です。
相続税で評価される株式評価ではありません。実際にM&A等第三者に自社株を
譲渡する時、有力な売却価格の一つとされるものです。
会社売却あるいは買収を検討される場合、絶対に必要な情報であり、その
算定方法を理解しておくことで、経営者様は相手との価格交渉を有利に
運ぶことができます。

はじめに企業価値、株主価値という用語の解説を致します。
企業価値から負債価値を差引いたものが株主価値とご理解下さい。
当然ですが、企業価値の向上は株主価値の向上になります。
代表的な算定方法をざっと解説します。

1.コストアプローチ
  企業価値=純資産(株主)価値+負債価値とする方法。資産、負債を
貸借対照表に記載された金額をそのまま採用する場合と、時価に評価して
算定する2つの方法がある。分かりやすいが、将来の収益力、成長性が
評価されないデメリットがある。

2.マーケットアプローチ
  いくつかの方法があるが代表的なものとして、評価会社と類似した上場企業の
株価を基準にして、利益等の財務指標との比較倍率(PER等)を乗じて算定する
方法がある(類似企業比準法)。市場の株価を基準にするため客観性があり、
収益性、成長性が反映されることはメリットであるが、特に非上場企業を評価
する場合、規模やビジネスモデルの類似した上場企業を選定することが難しい
ケースが多い。

3.インカムアプローチ
 将来期待される収益をベースに算定される。収益性、成長性が反映される。
代表的なものにDCF法がある。DCF法は事業計画をベースに将来のフリーキャッシュフロー
(株主と債権者に帰属するお金「以下、FCF」)を、リスクを勘案した割引率で
現在価値に割り戻して算定する方法である。

何となく分かったような気がしますが、何かもの足りないですね。
企業は継続して経済活動をするという前提に立てば、例えば1.コストアプローチの
ような静態的な評価では、今後の利益計画は無視されてしまいます。
又、マーケットアプローチでは、そもそも同じ会社は存在しないし、今後の
利益計画まで類似しているわけでもありませんので、やはり腑に落ちません。

3.インカムアプローチ DCF法

インカムアプローチ DCF法は、実務で最も使われる手法です。
(中小企業のM&Aではあまり活用されませんが)正にインカム、収益力に着目した
評価方法だと言えます。DCF法について、さらに詳細に解説したいと思います。
先ずは視覚的にイメージを持って頂く方が早いと思います。

如何でしょうか。企業が将来生み出すキャッシュ(10年間+10年後の継続価値)を割戻率(本事例では5%)で現在価値に直して(貨幣の時間価値)企業価値7367としています。

なお、継続価値とは事業計画年度以降続くFCF合計です。永続価値とも呼ばれています。
この例では、10年目のFCF373がそのまま継続するという前提で7460と計算されています。
さらに、7460は10年目以降の価値ですから、10年間の割戻で現在価値は4580になると
いうものです。

実務で最も使われるDCF法ですが、デメリットがあります。要するに主観的評価になると
いうものです。特に、将来のFCF予想をどう見るか、割引率をどう設定するかが、大きな
ポイントになります。
 
そのため、事業計画を楽観的・悲観的いくつかのシミュレーションを行い幅を持たせることが必要です。

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