企業価値経営を目指して (その3)

1.企業価値経営の目的と周知徹底

改めてDCF法で算定された「企業価値経営」を導入する4つの目的を
確認したいと思います。
 ・企業価値を知ることでM&Aを行う際、相手との価格交渉を有利に
運ぶことができる。
・将来の具体的な経営目標となり役職員の士気向上に繋がる。
・FCF重視の経営となり、無駄な資産を圧縮して最も重要な経営指標である
総資本利益率を改善できる。
 ・FCF改善により、次の重要な投資機会の資金に充当できる。

「企業価値経営」を進めるためには、先ず経営者の皆様が、企業価値算定方法を
理解され、さらにどの経営指標を変えれば、どれだけの企業価値が増加するかを
確認して頂くことが重要だと思います。
その上で、従業員に対して経営TOP自ら「企業価値経営」の4つの目的を理解
してもらうことです。

2.企業価値経営の進め方

毎年度の経営指標を設定します。売上、利益目標だけでは駄目です。
例えば、売掛金回収期間を5日早くしろ、在庫は月商の1ヶ月まで
として、それを超えた在庫は廃棄しろ、といったFCFを改善する
具体的方針を社内で周知徹底させることです。

さらに周知徹底させるためには、それら経営指標の達成度を人事評価項目に
入れることが肝要です。例えば、売上・利益の評価ウェイト30%、経営指標達成ウエイト
40%、と明確にしてください。

誤解して頂きたくないので、改めてご説明します。売上、利益を軽視している
わけではありません。「少々回収が遅くなっても売上が欲しい」というケースに
しばしば悩みますが、利益と企業価値向上のバランスをどう取るかの経営方針を
明確にすることです。

その時の判断基準は売上総利益率ではありません。リスク利益率を基準にする、
ということです。リスク利益率=売上総利益率÷回収月数です。この最低基準を
〇〇%と決めておくことです。売上総利益率が低ければ早く回収する、という
考え方です。

例えばA取引は売上総利益率が11%で回収は3ヶ月と、B取引は同じく8%で
1ヶ月回収する場合、最低基準8%としていればA取引はリスク利益率3.7%、
B取引は同じく8%となり、B取引は取引可、A取引は不可とする考え方です。
FCFではB取引>A取引になり、企業価値はB取引>A取引になります。(詳細は割愛)

話は大きく脱線しますが、ある会社の標語に「more like 〇〇(社名)」が
ありました。ある社員は「もっと〇〇会社を好きになろう」と解釈していました。
「もっと〇〇社員らしく」ではなく---。

又、ある会社のオーナーは「これからは観覧車型経営だ」とぶち上げましたが、
誰も遠慮してその意味するところを確認しようとせず、
「これからは観覧車型経営方針に則って--」を枕詞にする会議資料ばかりに
なったとか。社員それぞれの解釈があったのでしょう。笑い話のような本当の
話です。

経営TOPの発言は重いですね。
経営方針を的確にして、如何に周知徹底することができるかです。