管理会計と財務会計

経営者の皆様は、如何にして業績を向上させるか、儲けるか、日々悩んでおられることでしょう。

しかし、決算書を見ていても、どうやって利益を増やすか分かりません。

何故か。決算書は過去の業績結果だけを表示しているに過ぎないからです。

結果だけとは、業績を左右する要因となる数値が表示されず、儲けの要因となる各数値の掛け算、

加減算の結果が表示されるだけ、という意味です。結果として売上〇%、利益は△%減少した

ことは分かりますが、何故そうなったのか、何が経営課題なのか決算書からは分かりません。

例えば、売上です。前期比10%減は分かりますが、原因は売上単価なのか、売上数量なのか

分かりません。会計には、決算書を作成するルールとなる財務会計と、経営課題を発見し経営

判断に資する管理会計と言われる2つがあります。勿論、経営者にとって管理会計が重要です。

例えば売上原価の10%削減は、100%の利益増加になる可能性があります。経費の10%圧縮は、

当該10%相当額の利益増加にしかなりません。それだけではありません。

場合によっては必要な投資をせずに競争力を失う弊害をもたらすかもしれません。

社員のやる気を失わせるデメリットをもたらすかもしれません。あなたの会社は、儲からない

ことを理由にして経費削減、人減らしなどに邁進していませんか?

百聞は一見に如かず。簡単な管理会計の事例を見ましょう。

決算書には登場しない用語「変動費」「固定費」「限界利益」があります。先ず、変動費とは

売上と比例して増減する費用のことです。典型的な変動費は仕入原価です。

又、売上に関係なく発生する費用を「固定費」と言います。人件費がその典型です。売上から

変動費を差し引いたものが「限界利益」、さらに限界利益から固定費を引いたものが営業利益です。

この表では、限界利益率20%を基準としています。先ず、基準の販売計画を事例1

として、事例2から10まで、販売単価、仕入単価、販売数量、固定費がそれぞれ

5%増減した場合、さらにそれらが複合した場合に、事例1の営業利益はどう変化

するかシミュレーションしています。

どうでしょうか。これまで、皆様は「売上を伸ばせ、経費を減らせ」と檄を飛ばしてこられた

経験がおありだと思いますが、必ずしも的確な指示ではなかったのではないでしょうか。

例えば、事例2では、販売数量を5%増やしても営業利益は他の事例と比較して、それほど

営業利益は増えません。しかし、事例3のように販売単価を5%アップしたらどうでしょうか。

営業利益は大きく増加します。事例5は仕入単価を5%減らしていますが、販売数量を増やす

よりも、大きく営業利益を押し上げています。事例10の固定費削減はどうでしょうか。

減らした額しか営業利益は増えていません。むしろ、積極投資により固定費増をカバーして余り

ある仕入単価削減等をもたらすかもしれません。

儲けの原動力ランキング(注)は

1位 事例3 2位 事例5 3位 事例2 4位事例10 となります。

(注)この原動力ランキングは、販売単価、仕入単価、販売数量、固定費がそれぞれ単独で

 増減した場合の原動力順位です。どの項目が原動力となるかを求めるためです。

 したがって、販売単価と販売数量を共に5%増加させるような複合事例は除外しています。